Web API: The Good Partsを読んだ

Web API: The Good Parts

Web API: The Good Parts

この本は良い意味で期待通りだった点と、悪い意味で期待通りだった点、そして良い意味で期待を裏切られた点が一つずつある。

まず期待通りだった点。

プログラミングにおいて一貫性はとても重要だ。中途半端に正しいくらいなら、おかしな方法で一貫している方がまだましではないだろうか。

タイトルからも分かるように本書は Web API を扱った書籍だ。Web API はその対象が社内などの一部の人に公開される場合と、広く一般に公開される場合の二通りがあるが、いずれにせよ世間で受け入れられている慣習があるならそれに従う事が望ましい。独自のルールは極力排除すべきである。

だから Web API を実装するときは、他のサービスでどうしているかが重要になってくる。そういうことが書いてあると思っていたら実際そういうことがたくさん書いてあった。だから Web API を設計する前にこの本を確認すれば、我が社だけの独自ルール、みたいなのを避けることができるだろう。

この本が出版された 2014 年は REST 全盛の時代だったので、この本も基本的に「皆 REST だから REST でいこう」というスタンスなのだが、それが悪い意味で期待通りだった点。目次を見ると 2章 9 節で HATEOAS に触れているが、軽く触れているだけで「時期尚早」みたいな感じで終わっていた。この点については悪い意味で期待通りだった。

ついでに言えば、最近 Web API 界隈を賑わしている GraphQL は 2015 年発表なので、当たり前だけど 2014 年発売の本書にはその影も形も出てこない。もし GraphQL の話を期待しているのであれば他を当たるしか無い。

そして良い意味で期待を裏切られた点。それは HTTP の仕様やブラウザの動作について結構なボリュームで書かれていること。

Web API は当然ながら HTTP を使って提供する。その HTTP についての説明が意外と厚い。キャッシュの話とか、セキュリティの話とか。メディアタイプの歴史的経緯の話とか知らなかったので面白かった。

そういう意味で「Web API: The Good Parts」っていうタイトルは、たしかにその通りなんだけど、読者を狭めているような気がした。逆に言えば「API とか書かないから俺は読まなくていいや」と思っている人も、 Web に関わっているなら読んでみてもいい。技術評論社の「Web を支える技術」と内容的には近いと思う。