「動的平衡」は理系の人なら誰でも楽しめる良書
動的平衡(福岡伸一)を友人から借りて読んだ文系・理系というくくりは不要だと思うが、特に理系の人にオススメしたい。本書は各章がほぼ独立しているので気軽に読めるのも嬉しい。
あまり書きすぎるのもよくないので、僕が一番面白いなーと感じた箇所を紹介したい。 それは、大人になると何故時間が早く進むように感じられるのか、について記述された箇所だ。
三歳の子供にとって、一年はこれまで生きてきた全人生の三分の一であるのに対し、三十歳の大人にとっては三十分の一だから
よく聞く説明だが、はっきり言って、これは答えになっていない。確かに自分の年齢を分母にして一年を考えると、年をとるにつれて一年の重みは相対的に小さくなる。しかし、だからといって一年という時間が短く感じられる理由にはならない。
たしかにその通りだ。では生物学的にどのようにこの現象を説明できるのかというと
生物の体内時計の正確な分子メカニズムは未だ完全には解明されていない。しかし、細胞分裂のタイミングや分化プログラムなどの時間経過は、すべてタンパク質の分解と合成のサイクルによってコントロールされていることがわかっている。つまりタンパク質の新陳代謝速度が、体内時計の秒針なのである。
そしてもう一つの厳然たる事実は、私達の新陳代謝速度が加齢と共に確実に遅くなるということである。つまり体内時計は徐々にゆっくりと回ることになる。(略)その結果、一年の時間地方は徐々に長くなっていく。にもかかわらず、実際の物理的な時間はいつでも同じスピードで過ぎていく。
他にもES細胞や遺伝子組換え食品についての話題も面白い。僕はバックグラウンドが情報学なので、これらの話題にはそこまで精通している訳ではないけれど、著者が歴史的背景も含めて詳しく(かつ分かりやすく)紹介してくれているため、よく理解することができた。