読み終えた小説の山を眺めて思うこと

「細部に魂が宿る」という言葉がある。

小説を読み終えて後になってふと物語を思い返すとき、頭に浮かぶのはクライマックスであったり、非常に印象深いシーンであったり、そういう一つ一つの場面を切り取って思い返すのが普通だろう。それらがどうやってつながっていたのか、その詳細は思い出さないというか忘れてしまって思い出せないものだろう。少なくとも僕もそうだ。

で、そういう、物語の細かい部分は思い出せないが、全体としては話に整合性がとれていたことが分かっている、というとき、なんだかものすごく虚しくなる。小説家が、破綻の無いように緻密に練り上げたストーリーをなぞってひとしきり楽しんだ後には、その細部を忘れてしまう。魂が宿っているのはそこのはずなのに。